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酔いどれ広報マン中国をゆく

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2016年 01月 27日

中国企業広報と創業者PR

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 中国での企業広報において、創業者のPRは有効な手段といえるかもしれません。中国は急速な成長の段階を経て、踊り場、減速期を迎えており、先進国の事例、とりわけ外資大手の歴史のある企業が、どのようにそういった局面を乗り越えてきたのかについて、強い興味を持っています。さらに言えば、中国もまだまだ大手企業の創業者が現役で活躍している状況や、昨今のIT系スタートアップブーム、そして中国では経営者が(独裁的な)リーダーシップを取るマネジメントが評価を集める傾向があります。それゆえ、成功した創業者(経営者)への興味は高いのです。こういった興味の高さをいかに企業の知名度や評価につなげられるかは、企業広報では非常に重要なポイントとなります。では、日本企業の創業者は、中国でどのように評価されているのでしょうか。

 まず有名どころを挙げると、稲盛和夫氏、孫正義氏、柳井正氏、松下幸之助氏、本田宗一郎氏、盛田昭夫氏といったところでしょうか。前者3名は現役で活躍する経営者、後者3名は故人ですね。この中、つまり日本人創業経営者で最も有名で人気があるのは、圧倒的に稲盛和夫氏です。稲盛氏の公式微博(ウェイボー:中国版Twitter)のファン数は200万人と圧倒的な数を誇っており、著書の発行部数も中国では異例の部数を発行しています。私は個人的に稲盛氏の信望者なので、少し贔屓目?が入ってしまい冷静な感覚がわからないのですが、皆さんから見るといかがでしょうか?稲盛氏が一番人気と聞くと、意外でしょうか。

 稲盛氏人気の背景を分析してみましょう。まず、メディア視点では、稲盛氏が2004年に出版した「生き方」の中国語翻訳版が、2008年に出版されベストセラーとなったこと、CCTVの人気番組「対話」への度々の出演があります。同時にその頃、金融危機が勃発し、中国経済は緩やかな減速を始めた時期で、多くの企業経営者が企業経営に悩み、救いを求めていた時期でもあります。利己主義がまかり通る中、利他という考え方が、新鮮に映ったようです。極め付けは、中国でも大きなニュースとなった日本航空の再建でしょう。そして、そういった注目を落とし込む先として、すでに2007年には私塾である「盛和塾」も中国で開設をしており、基盤も整っていました。こういった背景や経緯を経て、圧倒的な人気を得ているものと思われます。

 しかしながら、少し勿体無いのは、その「稲盛人気」がどれだけ「京セラ」という企業の評価に繋がっているかという部分です。もちろん、うまく寄与している部分があるのは事実だと思いますが、あまりに稲盛氏の人気が凄まじいため、どこまで活用できているかというと評価がしにくいところではあります。同じく、孫正義氏や柳井正氏のような現役の経営者も、現役であることがうまく寄与して人気を得ているように思いますが、やはり企業広報への活用はあまりできていないように思います。中国の企業が、うまく創業者(経営者)を企業広報に活用しているのとは、少し差があるように思います。もちろん、物理要因(土地要因)もあるのでしょうが。企業広報でネタがない、と嘆く大手の日本企業は、自社の中にもう少し見出せるものがあるかもしれませんし、中国事業のトップをプロモートするという手もあると思います。


by hf0424 | 2016-01-27 06:27 | Work


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